ERRC代表の私 Mia は、カウンセラーであり、スペシャルタレント当事者でもあります。また、獣医学博士としても、これまでさまざまな形で動物に関わってきました。
特に、障がいや病、もしくはそれによる心や身体の苦しみを抱える人々が、動物たちによって救われる瞬間を経験できたことは、私自身に大きな影響をもたらしました。
今回は、そんな動物たちの温かい ”サポート” をご紹介したいと思います。アニマルセラピーについてのお話です。
アニマルセラピーはレジリエンス
動物に触れ合ったりすることで、病や障がいをもつ人たちが明るく過ごせるようになった、そんな話を一度でも聞いたことはありませんか?これを日本では一般的に、アニマルセラピーと呼んでいます。厳密には、以下のように分類され、それぞれ異なる目的と方法で定義されています。
・動物介在療法 (Animal-Assisted Therapy)
・動物介在活動 (Animal-Assisted Activity)
・動物介在教育 (Animal-Assisted Education)
病や障がいで傷ついている人たちを励ましたり、脳卒中で後遺症のある患者さんへのリハビリ補助のため、また、孤独な高齢者を元気づけるためなど、目的は違えど、動物たちのもつ不思議な癒しパワーは科学的にも有効だとされています。また、不幸な運命であった動物たちを、セラピーアニマルとして救えるチャンスとしても期待できます。
大昔から続いてきた、動物と人との関係性はとても興味深いものです。非言語でのコミュニケーションや触れ合いでは、相手をありのまま受け止めてくれる、温かくて深い愛情を感じることができます。動物には、傷ついた心や身体を癒してくれる、不思議な力があるのです。
そして、スペシャルタレントの人にも、こうした動物との絆が有効に働くことがあります。多くのスペシャルタレントの人が抱えるコミュニケーションの問題は、人間が言葉を話すからこその問題とも言えます。動物との触れ合いに言葉はいりません。非言語だからこそ伝わるものがあり、気持ちを穏やかにさせてくれるのでしょう。これこそが、レジリエンスなのです。この動物たちによるレジリエンスについて、少し詳しくお話したいと思います。
子どもたちを笑顔にする犬たち
動物介在活動は、先の3つの中でも一番利用しやすく、さまざまな動物と気楽に触れ合うことができます。日本でアニマルセラピーと言われるものは、一般的にこれを指す場合がほとんどです。主に、動物と触れ合ったり遊んだりすることで、より活動的になったり、コミュニケーション能力が向上すること、そしてQOL (生活の質) の向上などが期待されます。
日本動物病院協会 (JAHA) などによって、さまざまな病院や施設で訪問活動が行われていますが、聖路加国際病院の小児病棟は、日本で初めて小児病院にセラピー犬の訪問を受け入れた医療機関だそうで、この内容は本にもなっています。
『犬が来る病院 大塚敦子』
医療的な効果というよりも子どもたちの心のケアとして、犬たちの訪問は非常に効果的であると言われています。ふれあい活動を通して、これまで塞ぎがちだった子が病棟に馴染んだり、犬に会いたいという気持ちが離床を促したり、病院のスタッフともより仲良くなれるきっかけになるのだといいます。
長期間入院する子どもたちの多くは、これまであった当たり前の生活が突然断ち切られてしまったわけです。犬たちは、そんな子どもたちの大きな不安や恐怖を癒すようにそっと寄り添います。友達のように一緒に遊んだり、ときには親のように、彼らを優しい眼差しで見守ってくれるのでしょう。一瞬でも病の苦しみを忘れて、たくさんの笑いと幸せを作り出してくれるセラピー犬は、こうした子どもたちになくてはならない存在と言えます。
千葉大学医学部付属病院HPより
リハビリを楽しくしてくれる
一方、動物介在療法と呼ばれるものは、アニマルセラピーの中でも専門的で、医療従事者の主導のもとで実施される補完医療として定義されています。脳卒中後の理学療法や言語療法など、病院内でリハビリの一環として利用されたりすることもあります。
以前もお話しましたが、脳卒中によって動かなくなってしまった手足の機能を取り戻すためのリハビリは、非常に過酷です (期待される新たなリハビリ "クロスエデュケーション")。しかし、ここに犬が加わることで、予想以上の効果を生むことがあるといいます。犬がいるとなぜ動かない手足が動くようになるのでしょう。
リハビリは地道に継続して行わなければなりません。これは決して簡単なことではなく「リハビリなんて無駄」「もう一生動かないかも」過酷なリハビリゆえ、こういったマイナスな感情は誰にでも生まれやすいものです。前に進まなくなることもあるでしょう。行動するより頭でいろいろと考えてしまうからなのかもしれません。
でもそこに、犬が尻尾を振って近寄ってきたら、どうでしょう。犬好きな人であれば「撫でたい」と思うはずです。その感情や感覚が、手足を動かすのだといいます。こういったプラスの感情は、実は一番大事なのかもしれません。動物たちは、そういった忘れがちなプラスの感情を呼び起こし、辛いリハビリにも笑顔を運んでくれるのです。
また、犬に話かけたり、号令をかけることで、言語療法としても活用することができます。犬が号令を理解してくれたら嬉しいし、理解してくれなくても、相手が犬だったら怒ることもないでしょう。失語症などで悩んでいる方の中には、なかなか会話すること自体に前向きにならないこともあるでしょうが、犬が一緒なら、自然と発語も増え、非常に楽しい訓練になりそうです。
JAHA HPより
高齢者に生きがいを
また、認知症などを患った高齢者にとっても、精神的、身体的に大きなサポーターとなってくれるようです。前述のリハビリ補助のほかに、認知症の緩和を目的として取り組んでいる病院もあるようです。こちらも本になっています。
『セラピードッグの子守歌 認知症患者と犬たちの3500日 真並恭介』
犬の温もりや無垢な仕草は、自分の老いや病を忘れさせてくれるばかりでなく、「愛おしい」という温かい感情を生みます。普段、暴力や暴言がある人でも、驚くほど穏やかになるといいます。犬に触れることで、心身が安定し、優しい自分を呼び覚ましてくれるくれるのかもしれません。
セラピードッグの中には、少し神経質で臆病な性格の犬もいたそうですが、これが功を奏し「この子を守ってあげたい」「この子のためにも元気にならなければ」という ”逆セラピー” なるものも効果的だったそうです。人に頼られることがめっきりなくなってしまったお年寄りに生きがいを与え、残りの人生を豊かにしてくれることでしょう。
JAHA HPより
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